革について

今回はオーダーする際に選んでいただく革(アッパーレザー)について。

アッパーレザーとは靴の上面、足を覆っている最も面積の大きい部分の事です。

(いわゆる革底はレザーソールなどと呼んでいます。)

KHではまず大きく分けると生産国で、国産皮革、輸入皮革の2種類があります。

そして表面の雰囲気で、スムース、起毛、シボの3種類でしょうか。

それぞれ見ていきましょう。

国産皮革

国産の黒はKHでは最も選択されている革で、無難、普段使いに適している。

定番の黒はその時々によってモノを変えている。(理由は品質の安定性やコストが関係している。)

国産皮革(牛)といっても、鞣しが日本であり、原皮は輸入モノ欧州などがほとんど。

ということですが、追加料金なしで選べるので、オーダー初心者の方などから支持されています。

靴はフィッティングに最も影響があるのが木型なので、革に関してはそこまでこだわらないという方もいらっしゃいます。(実際は革もフィッティングに影響が出ます。)

輸入皮革と比べて安いからといってダメかというと、そういう訳では無く、長期間の使用に耐えうる素材、見栄えのする素材を吟味しています。

「定番の黒はその時々によってモノを変えている。」

これまで数種類変えています。(元に戻る事もあります)革はナマモノと言っても良いくらいその時々で品質が変わります。KHではアッパーレザーは原則現物を自らの目で見て素材を見極めて買いますが、当然基準に満たない材料は購入には至りません。そういったことからモノを変えているので、以前の革が欲しいとのご希望でも「現在は取り扱っていない」ということはよくありますので、ご了承ください。黒い牛革でも、若干表面の仕上げの差や厚み、やわらかさ、ハリが変わります。

また近年の問題としてタンナー(タナリー)が廃業して、こちらに在庫がない場合(黒以外)、手に入らない革もございます。靴作りを取り巻く環境は年々厳しくなっていますね。

輸入皮革

高級感、こだわりを求める方に。

黒色はキメの細かさ、茶色は透明感や色調で国産皮革と差が出やすい。

海外タンナー(タナリー)は有名なので、選択されやすい。

KHでは輸入皮革は追加料金で選択出来るようにしています。

「国産と輸入、どちらにしようか、迷う〜」という方、多くいらっしゃいます。

そこでサンプルを見比べて頂いて、「どちらが国産、輸入、わかりますか?」と問います。

結果は当然ですが、違いがわかる方もいらっしゃれば、わからない方もいらっしゃいます。

その上で選んで頂くので、納得感はあるかなと。もちろん「今は違いはわからないけれど、とにかく良いモノを履きたい」という方もいらっしゃると思うので、ご希望通りでご注文を承ります。

国産との差ですが、

「黒色はキメの細かさ、茶色は透明感や色調で国産皮革と差が出やすい。」

と書きました。

輸入皮革の中でもキメの細かさはもちろん革の品番、モデルによって異なりますが、黒は特にわかりやすく出ます。キメが細かいと光を反射しやすく、磨くと光りやすいので、見栄えはします。

茶色は磨いた後の透明感や色の出方が雰囲気良く、靴も全体的に映えます。

この辺りは感覚的なところが大きいので、なかなか言語化するのが難しいのですが、わかる方にはわかっていただけるかなと思います。

また茶色に限らず、他の色も輸入皮革(欧州)の方が、発色が鮮やかだったり、色数が豊富だったりで差はあるのかなと感じています。この辺りは環境の差などあるかもしれませんね。これは書くと長くなるので、この辺りで。

職人目線で言うと、製品完成時の雰囲気の良し悪しは技量によるところはもちろんあるのですが、材料によっても大きく変わる事があるので、良い革は職人を助けてくれる最後のピース…くらい重要に考えています。

「海外タンナー(タナリー)は有名なので、選択されやすい。」

デュプイ、アノネイ、ワインハイマー…ご存知ない方からすると呪文みたいな感じと思いますが、これらは欧州の鞣し業者で、靴やカバンなどの皮革を作っており、有名メーカー、メゾンなどにも卸しているので、知らないうちにその革の製品を使っているかもしれませんね。KHでもこれらの革は使用しております。

最近は既製品でこれらのタンナー名がセールストークとして使われる事もあるので、ご存じの方も多いでしょう。逆に国産タンナーをご存知の方はいらっしゃるでしょうか?一部は知られていると思いますが、名前を出した海外タンナーほどは知られていないと思います。こういう事も国産との差はあるのかなと。

さて靴だと黒が最もスタンダードなので、よく注文を受けるのですが、輸入皮革の黒に関してはタンナー(タナリー)の指定は頂けません。理由は国産の時と同じく、その時良いと思ったモノを仕入れて使うからです。近年特にバラツキがあり、良かったり悪かったり…お客様には「魚河岸、鮨屋みたいなものです(笑」とご説明していますが、ここは信頼して任せて頂きたいなと思います。あとは黒でも柔らかさやハリはやはり異なるので、足の状態や靴のスタイルに合わせて、こちらで選択しています。リクエストがあればもちろんお気軽に言っていただければと思います。

茶色やその他ですが、これは色調などが多岐にわたることと黒ほど在庫が回転しないので、在庫の中からお選び頂く形になります。(在庫がない場合、色によっては廃番になっている事もございます。)

と長くなってしまったので、続きはまた次回に。