変則的なデザインについて(作り手としての意見

世間はシルバーウィーク?ってやつですか、私は仕事やってます(汗

さて今回は先日Xで投稿しました下記について、少し掘り下げたいと思います。

トリッキーで目を惹くデザインですが、作り手側からするとなかなか一筋縄ではいきません。

まず木型について。今回のお客様はこれまで短靴を複数足作られていて、木型に関しては完成の域に達してると思っていましたが、今回のデザインだとフィッティングで気になる箇所が見つかり、木型は今回のデザイン用に修正を施しています。このことからもデザインで木型は変わる可能性があります。

型紙は内外非対称の特殊なデザインで、特に外側が広く空いた部分が特徴的で、ここが原因で仮靴の時も靴になってくれませんでした(涙 あれやこれやと試行錯誤の結果、原因(これまでの経験が活きました)がわかり靴になった時は手応えを感じました。

既製品の場合だとこうした試作を重ねて、本生産に入り後は流れで・・・となると思うのですが、ビスポークの場合だとそれ(型紙)を一足のためにやるので、非効率なのは確かだとご理解いただけると思います。また余談ですが多少無理のある仕様も一足だけなら何とか・・・とパワープレイで作り上げることもたまにあります。この辺りはビスポークならではですね(是非はともかく)

作り手からするとこうした未経験のトリッキーなデザインはプレッシャーを感じながら進めるわけです。(特に今回は革が最後の一足分で失敗できないのも大きいプレッシャーとなりました。こちらの都合ですが)

こうして書いていると変則的なデザイン、仕様は何だかネガティブな感じがして、注文主としては「頼みにくいなぁ(苦笑」と思われたと思いますが、それはそれとしてあまり気にしすぎないでください。(いまさら無理とか言わないで

こうしたハードルが高い仕事を引き受けるのは、もちろん顧客の方の希望を叶えたいという思いからですが、職人的にもポジティブな部分はあります。まず技術的に新たな引き出しが増えることですが、技術の幅が広がること自体は良いことですし、それが思いもよらないところで役に立つ場合があります。一人でほぼ全行程をこなしているKHにとっては(通常、分業の靴作りではなかなか気が付かないところに気付き)新たな技術を他の分野で使える可能性があります。製甲の新たな技術が底付けに役に立った、型紙の技術が木型に役に立ったなど。靴の工程を大きく分けてA~Eまであるとすると、A→D、C→B、B→E、D→B→C・・・思い寄らないところで相互に作用しあって、これまでクリアできなかった問題が解決するといったことも稀にあります。こうしたことは工程が多い靴作り、そしてオールラウンドプレイヤーならではの強み(と言わせてください)かなと思います。理系の基礎研究から想像もしないイノベーションが起こるみたいで面白いですね。

(ビスポークに限らず)靴は納品(購入)後のトラブル、クレームが多い製品ですが、そういった接客の際の説明や対応の場合にも上述の靴作りの経験が活きることもあります。

またデザインや仕様によって断る場合ですが、「顧客のためにならない(価格、機能面など」「必要となる技術レベルが高過ぎる(他に向いてる工房がある」などがあります。この辺りはまた追々。

ということでこれまで新たなデザインで作り手として成長する機会(新境地開拓)を与えてくださいました顧客の皆様には厚くお礼申し上げたいと思います。

これからも苦しみながら(楽しみながら)靴作りを行なっていきたいと思います。

では。